中国が先月の株価対策に幾らつぎ込んだのか、お伝えします!
中国が先月の株価対策に幾らつぎ込んだのか、お伝えします!
こんにちは、日経225先物 無限攻略の225 えびすです。
中国には3つの証券取引所があります。
上海証券取引所は842社が上場し、時価総額が約230兆円です。
香港証券取引所は1445社が上場しており、シンセン証券取引所には、1,714社が上場していて時価総額は、26.1兆元(522兆円)です。
香港と深セン両方で62.4兆元(1248兆円)、1社平均の企業価値は5,100億円に達する高騰だったのです(2015年6月12日)。
これは、
日本の時価総額(東証1部:602兆円:7月27日)の約2倍、
NY市場とナスダックを合計した、米国の時価総額($26兆:3120兆円:15年2月)の40%
にあたります。
すなわち、先月の中国の30%下落で、374兆円の金融資産が失われたことになるのです。
中国では、投資家は8,900万人と言われます。
日本では700万人ですから、人口10倍に対する割合では、あまり変わりません。
1人当たり420万円の損害です。
中国の特徴は、個人投資家が市場の80%の売買を占めることです(日本では、個人の所有比率は、ほぼ20%と少ない)。
大きな株価上昇は、2014年11月からでしたから、実際に減ったという感覚の額は、1人当たりで300万円ぐらいでしょう。
北京の平均賃金は6万9,500元(2014年:139万円/年)です。
損は年収の2.2年分にあたるわけです。
中国では、金融機関の株投資への参加が、売買シェアでは20%と少ないのです。
持ち分も時価で250兆円程度(推計)と少ないため、サブプライム・ローンのデフォルトがデリバティブ証券全体に波及し、MBSやCDOの全面崩壊を招いた米国型の信用恐慌にはならないと思われますので、ここはキチンと理解しておきましょうね。
中国の国有企業の株の過半は、政府がもっています。
中国は、外資を規制しています。
海外からはB株しか売買できません。
B株のシェアは2%と極めて少ないのです。
A株は、国内専用です。
株よりも今後、累積投資額が株よりはるかに大きい不動産の10%以上の下落が重なると、資産バブル崩壊の、信用恐慌になって行きます。
2015年1月の不動産は、70都市のうち68都市では、前年比平均5.1%の下落です(ブルムバーグ)。
これは過去最大の下落幅でした。
これが7%、10%と大きくなれば、ローン債権の不良化が起こり、危なくなります。
(注)15年6月では、政府の住宅対策により70都市のうち27都市が再び上昇し、34都市が下落中です。
1年前に比べると、シンセンと北京を除く68都市が下落しています。
2014年6月ころから、下落する都市が増えたのです。
もとは共産主義の中国では国有企業を含み、経済に対して政府の政策の占める割合が大きく、株価と地価にも、政府の対策がよく効きます。
投資家8,900万人が、株価で受けた、年収の2.2年分の損害は、逆資産効果から、消費と住宅不況をもたらすスケールです。
中国政府が躍起になって株価を凍結し、2兆元(40兆円)の信用貸しで焦げ付きが出た証券会社に、不足資金を供給して、株価対策をとった理由はこういう背景があったからです。
金融危機は、(1)不動産、(2)株、(3)国債を含む債券、(4)デリバティブの価格崩壊から起こります。
金融危機が起こる前兆で、ファンダメンタルズ見地からみて合理的な価格から、2倍や3倍も上になる高騰がまずはあります。
バブルはファンダメンタルズ(基礎的な経済指標)を大きく超えた価格という意味です。
しかし、どれくらいの、株価でPER倍率ならバブルかという基準はありません。
地価のバブルの基準もありません。
高値の後、大きく下がったからバブルだった、と言っているにすぎないのです。
FRBの名議長と言われたグリーンスパンも、リーマン危機の後、「 米国の住宅価格がバブルとは、わからなかった・・・」 と言っています。
株価を純益予想で割ったPERは、株価のファンダメンタルズです。
ただし、変動の多い単年度の利益では、この判断が難しいのです。
ノーベル賞経済学者のロバート・シラーは、10年間の平均純益で、株価を割るPERを考えて、120年分を公表しています。
このシラーPER ( Shiller P/E Ratio ) では、25倍や25倍を超えたとき、暴落が来ているのが分かります ( 120年間で5回 ) 。
シラーPERは、米国では注目されている指数です。
中国株の予想PERは、暴落前日の6月12日には、21倍でした。
7月は16~17倍に下がっています。
比較すれば、日本では7月で20倍、米国ダウでは16倍、ナスダックでは23倍です。
普通、20倍以上は、高値の恐怖がある水準です。
予想PERは、企業が証券取引所に出す経営計画の、次期予想純益から計算されています。
(注)現在の株価水準:短期ゼロ金利と量的緩和が、日米欧のPER倍率を、5倍分くらい上げています。日本の株価は、2014年11月以降は、政府によるPKO(価格上昇政策)のため、20倍を超えても、特殊な状況です。
金融危機は、不動産と金融商品の高騰が続くように見えている日に、「 ある日突然 」 起こります。
(注)FRBの利上げ:FRBのイエレン議長が、2015年中の利上げを繰り返し言う理由は、ゼロ金利と量的緩和が生んだ (1)株価バブル (2)国債を含む債券のバブル (3)不動産価格の上昇と、その後の崩壊を恐れているからです。
中国株の
2014年11月からの急騰、
6月13日からの急落
が何を意味するのか?
中国の実質GDPの成長率は、リーマン危機後の4兆元(80兆円)の経済対策が切れた2011年以降は、政府発表より3~4ポイント(%)は低かったのではないかと思われます。
GDPは、企業の粗利益の合計です。
GDPの伸び率が低いということは、企業の粗利益と利益も低い。
2011年の実質GDPの増加は、9.3%ではなく5%付近
2012年は、7.8%ではなく4%付近
2013年は、7.8%ではなく4%付近、ということです。
物価上昇は、2011年5.4%、12年2.7%、13年2.6%とされています。
以上から、物価上昇を含む名目GDPでは、
2011年10.4%(公式14.7%)、
12年6.7%(公式10.5%)、
13年6.6%(公式10.4%)でしょう。
名目でも実質でも、ほぼ4%の差があります。
(注)名目と実質:名目GDPを示す理由は、個人の所得、企業の売上、利益、株価、住宅価格は、物価上昇を含む名目の値です。実質は、物価上昇を引いたものです。
名目GDPと実質GDPの内容、企業の売上と利益及び世帯の所得との関係を知ると、会社の売上、利益、自分の所得と結びつけた経済がわかります。
名目GDPの増加率は、「 個人所得+企業所得=国民所得 」 の増加率とほぼ同じになります。
ただし、GDPは数値です。
東芝の粉飾のように、集計結果に対し、エクセルの2を3に変えるというような修正を加えることができます。
企業の利益と個人の所得は、実際の会計金額です。
名目GDPのように、政府が数値で作ることはできない。
名目GDP増加が低い場合、企業の合計利益は、増えません。
株価は、ファンダメンタルズでは、企業の次期純益を予想し、「 次期予想純益×PER倍率=期待株価 」 を判断指標にしながら決まっていきます。
何が言いたいかというと、中国の2014年10月まで上海総合指数の低迷(PERで8倍から10倍)では、政府発表のGDPとは別に、投資家は実際の企業利益の低下をキチンと捉えていたのではないか!ということです。
国有企業であっても、政府は企業の売上や利益、実際に払う賃金の操作はできません。
このため、政府が統計の実質や名目のGDPあるいは物価上昇率がいくらであろうと、人々は、今月もらう賃金から、実際の経済の成長を知ります。
2011年以降、人々は、自分の所得の伸び率の低下から、将来の期待所得を修正したのでしょう。
自社の売上や利益、そして自分の賃金から、人々が抱くGDPの成長期待値が低下した。
このGDP期待値の低下が、
2010年からの不動産価格の上昇の停止、及び下落と、
2014年11月までの株価低迷(PERから10倍)
の根本での原因に思えてならないのです。
中国の株価は、リーマン危機以後の6年間、政府の株価対策で大きな上昇が始まる2014年11月までは、PERで8から10倍付近を低迷していました。
この株価は、実際の、人々が感じているGDPの伸び率の低下を反映したものだったのかもしれません。
出来高のグラフも出ています。
2014年11月から、売買額が急に5倍に増えています。
政府の株価対策によるものです。
上海市場の売買の出来高を見ると、2014年11月以降は、それ以前の10年の5倍に増えています。
5倍の資金が株式市場に投じられたことであり、これは、明白に政府の株価対策を示すものです。
変動金利で2%台、固定でも3%台と低い住宅ローン金利(中国銀行)から見て、政府が言う名目GDPでの10%、実質GDPで7%の成長は疑いたくなります。
物価上昇を含んだ名目GDPの増加率は、数年単位以上の長期で見ると不動産価格の上昇にほぼ比例します。
長期金利も、名目GDPの上昇とバランスします。
「長期金利≒実質GDPの期待上昇率+物価の期待上昇率=期待名目GDP上昇率」 付近です。
そして住宅価格も、以下のメカニズムで、結局は名目GDPの上昇との見合いで判断されるのです。
(注)物価の下落があり、1998年からの17年間も、実質及び名目GDPでのマイナスが多かった日本では、GDPと企業所得、個人所得、株価、金利、住宅価格の、こうした関係が、忘れられてしまっています。
ローンで買う住宅の価格は、20歳代、30歳代の人の、現在の所得ではなく、10年後の所得の想定によって判断され買われます。
事例を、年間所得100万円の、都市部の平均的な労働者とします。
(注)都市部の賃金は5万1474元とされ、1元20円で換算すると103万円です(国家統計局:2013年)。なお、北京は30%くらい高い。
(1)所得が年率で12%増え、その増加が続くと感じているとき
現在の住宅価格1500万円 ÷10年後の所得100万円×1.12の10乗=1500÷310=4.8年分
(2)所得増加が7%に下がり、将来も7%と思っているとき
現在の住宅価格1500万円 ÷10年後の所得100万円×1.07の10乗=1500÷200=7.5年分
名目のGDP成長率で15%を想定していた時代から、7%~9%の時代になると、人々は、将来の所得観を過去の12%から、7%上昇くらいに修正していくはずです。
これは10年後の想定所得3.1倍が、2倍に下がることを意味します。
住宅価格は、将来の想定所得との関係で「高い/安い」が決まります。
人々はローンの支払い額とローンを払うときの将来所得を比較するからです。
(注)日本人の将来の所得観では、30代の人で、年2%の年齢給の上昇でしょう。年齢給として1年に2%の上昇が、上場企業の平均です。年収400万円の30歳の人が40歳を想定するとき、400万円×1.02の10乗=400×1.22=488万円でしょう。
中国の2010年までのように、名目GDPでの15%増と所得の12%増を想定している時代は、1500万円の住宅は、現在年収では15年分という高い価格であっても、3倍に上がった将来所得の想定からは5倍であり、安く感じます。
(注)名目GDPの増加と、企業所得及び個人所得(両方で国民所得)の増加は、ほぼ比例します。
このため、「上がらないうちに買っておこう 」という動きになります。
将来の想定年収(310万円)では、4.8年分の住宅価格だからです。
わが国でも、住宅価格が上昇し、所得が1年に7%は増えていた1980年代は、「 住宅は早く買うもの 」 でした。
1980年代は、この将来所得観は1年で7%の上昇だったのです。
(注)年収の5倍から最大でも6倍が、ローンが払える住宅価格の妥当値です。
所得の伸びも二桁だった中国では、将来の名目GDPが7%しか増えず、個人の所得も7%しか増えないだろうと人々が感じるようになると、同じ1500万円の住宅が、将来年収の7.5年分です。
「 ローンを払うのが困難な、高い価格 」 に変身します。
このため、1500万円の住宅が売れ残り、価格が下がっていくわけです。
事実、上がり続けてきた中国の住宅価格は、政府の強い振興策がある時以外は、2010年を起点に、下がる都市が多くなってきたのです。
名目GDPの期待値は、資産価格(不動産と株)の上昇と下落を左右するもっとも大きなファンダメンタルズ(基礎的経済指標)でしょう。
中国も、日本の約20年遅れで、生産年齢人口が減る時代になりました。
人口がわが国の10倍(13億人)ですから、65歳以上の高齢化のスケールも10倍です。
今後何が起こるか、そしてなぜ株価対策を先月行ったのか、この背景を頭の片隅に置いておかないと大変ことになりそうなのです。
長文で何が何やら?と感じた人もいるかもしれません。
ただ、経済学を学んだものとして今回の記事は大学の授業みたいな論調で説明することになって申し訳ありません。
最後に一言でまとめると、中国ではとにかく末恐ろしいことが待ち受けている、ということだけが伝われば幸いに存じます^^